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ベストセラーになった「歌う生物学者」本川達雄の「ゾウの時間 ネズミの時間」は、哺乳類では全ての動物が一生の間に心臓は20億回打つ等の面白い話がたくさん載っているのだが、私が興味を覚えたのは「島の法則」である。これは、ある地域が天変地異で大陸から切り離されると、そこに住む動物たちの大きさは時間と共に平均化する、というものである。すなわち大型の動物は小さくなり、小型の動物は大きくなる。 本川達雄はこれを米国と日本の比較に使っているところがおもしろい。つまり米国には天才的な人間が数多くいる一方で、つり銭を間違えるような店員もいる。一方、日本では天才肌の人は少ないが全体がまずまずのレベルで一様化されている。大学の教育レベルでも、1クラスの平均は日本が上だが、上位5人をとると米国のほうが上だと言う話を聞いたことがある。 こう言う話を聞いていると、多様な世界は進化の方向を向いており、平均化された世界と言うのは進化の袋小路ではないかと思えてくる。全員が、そこそこに優秀なのだが、飛びぬけた天才が出現しない世界である。そういえば、クラークの「幼年期の終わり」のオーバーロードも、テクノロジーは高度に発達しているが、それ以上進化しようのない行き止まりの文明として描かれている。 最近の「いじめ」なども、この平均化が原因のような気がしている。平均から外れた人間には居場所がないのである。だがそうすると米国では、いじめなどなさそうだが、そうでもないらしい。 今、私が心配しているのは、世界全体で「島の法則」が適用され始めているのではないかということである。こんなことを考えていたら、柳澤桂子の恐ろしい文章に出会った。
「遺伝子(ポリジーン)によって支配される性質は代をかさねて、子孫の数が増えるにつれて,その大部分が元来の祖先の持っていた特徴を失い、平均的になっていく傾向のあることが実験的にも理論的にも証明されている。」 |