ヘルマン・ヘッセ

ノーベル賞作家は難解で退屈だと思われていないだろうか?私は例外を2人知っている。ガルシア・マルケスとヘルマン・ヘッセである。もうだいぶ前だが、ヘッセが好きだといったら、「あれは中学生の読み物だ。」と言われてがっくりきた。彼女はどうせ「車輪の下」しか読んだことがなかったに違いない。

それが今、ヘッセがブームだそうである。

作家の中で誰か一人といわれたら、マルケスもいいし、ウンベルト・エーコもすごい、サリンジャーも大好き、ドストエフスキーも全部読んだ…でもやはりヘッセである。それは彼の作品への共感と、彼の生き方への尊敬からである。

最初に読んだのはデビュー作の「郷愁」だが、これはアルプスで生まれたペーターのすがすがしい物語である。この小説が生まれたいきさつがいい。当時ヘッセはエリーザベトという女性に思いを寄せていたのだが、一緒にいるときあまりにヘッセが無口なので、彼女は「あなたは小説でも書きなさい。そしたら読んであげるから。」といった。ヘッセは来なくり、そうして出来たのがこのデビュー作だ。

最近のブームは、数年前から日本で出版されているフォルカー・ミヒェルスがテーマ別にエッセイや短編を編集した一連のシリーズのせいだろう。「ヘルマン・ヘッセと音楽」「蝶」「色彩の魔術師」「人は成熟するにつれて若くなる」「庭仕事の楽しみ」がある。特に「庭仕事…」は写真やヘッセの水彩画が数多く入っていて楽しいものになっている。

そのヘッセの小説の中で1つを選べといわれたら、躊躇なく「荒野の狼」をあげる。アウトサイダーであったヘッセの孤独からほとばしるように書かれたファンタジーだ。主人公のハリー・ハラー(H.H.)はヘッセ(H.H)自身であるし、ハリーを導く女性ヘルミーネも彼のアニマであろう。彼はユング派の精神分析を受けたことがあり、ユングの影響は大きいと思うのだが、それを指摘した文章にお目にかかったことはない。

この小説は米国のヒッピーの間で、よく読まれたと聞く。「荒野の狼」は英語読みで「ステッペンウルフ」になる。映画「イージーライダー」で使われた「ワイルドで行こう」のグループ名は多分ここから来ている。米国で人気があったということで映画化もされ日本でも公開された。(映画化は1974年、日本公開は数年前と記憶している。)これは原作に忠実すぎる失敗策であったが…。


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