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「仕事術」
森清
岩波新書(1999)
評価:★★★☆
SOHO AWARDにノミネートされていたことから本書を知りました。
すこし回りくどく、読みにくい文章ではありましたが、SOHOの1員として、読む価値は十分あったと思います。
「公私融合」をキーワードに、「手の技術」「縁の技術」「知の技術」「育む技術」について考察しています。
著者の実体験による豊富な例が説得力を持たせています。宮大工や町工場といった例が出てきますが、不思議とデジタルなクリエーターに通じるところがあるように思います。
「縁の技術」でポイントとして、「情報化社会では相手に一歩踏み込む縁づくりがいい。間接的な人間関係でも済ませられるだけに『一歩』が必要である。」などあたりまえのようでも、はっとさせられることがあります。
私は終章で述べられた、建築家の磯崎新の例がうらやましかった。「ブランクになっている午前中のスケジュール表は、実務的建築家としての午後と夜の仕事時間に対して、建築も含めたあらゆる種類の絵栗チュールの発生状態とつき合っている混沌とした時間でもある」
「私の理想は、その間をうたた寝で過ごすことだ」「ある種のアイディアはそれまで重ねたさまざまなスタディが、雑多なものを切り捨ててすっくと立ち上がる瞬間にとらえることができる。」
こんな仕事の仕方ができたら理想である。
「コンサルタントの道具箱」
G.M.ワインバーグ
日経BP社(2003)
評価:★★★★
ワインバーグの著作の中では、ベストだと思っている、「コンサルタントの秘密」の続編である。コンサルタントのための16の道具(これらは物の名前がついているが全て抽象的なものである)と、それを補足する多くの法則からなっている。
例えば、正しいこと、そうでないことを見分ける能力を「知恵の箱」と呼んでいるが、その中には、「ケアリーのゴミ警報」という法則がある。それは「やる価値のないことは、きちんとやる価値もない。ゴミにのしをつけるな。」というものである。これらのワインバーグの経験から出た法則が、その法則の名前の元になった面白い逸話とともに紹介されている。
これらの道具は、文章にすると、自分でも使えそうな錯覚を抱くが、実際に使おうとすると、相当に難しいと思われる。それは人の頭とこころの使い方であるから。
コンサルタント以外の人々には、無用と思われるかもしれないが、本書はコンサルタントと依頼主との人間関係や自分の成長に焦点をあてているので、例えばコンサルタントをフリーランスや、SEに読み替えても十分に通じる。
法則ではないが、私が願う理想の姿を描いた次の文章は忘れられない。そもそもこれこそが、この本が書かれた理由だと思う。
「自分が尊重され、最高の自分を見せる機会のある適正な労働条件のもとで、自分の得意とする楽しい仕事をして、いつも忙しくしていよう。」
前著に比べ、内容が薄くなった感じを受けたことと、翻訳が木村泉さんに比べ、いまひとつでちょっとがっかりである。しかしこの本に投資するお金と時間は決して無駄にならないと思う。
他に役に立ちそうに思える法則が多数ある。
・新しく学ぶことがなくなったら、次へ移るときだ。(ダニーの決断のコツ)
・行動に挫折したら、情報を収集せよ。情報収集に挫折したら、眠れ。(ルグインの法則)
・(1)言葉、口調、ボディーランゲージを使って、心から感謝を示す。
(2)残念そうに、しかしはっきりと、言い訳せずにノーと言う。
(3)将来、別の関係を作るきっかけを示す。
(サティアの物柔らかな一蹴 :依頼を断る際の方法)
・相手が奇妙な行動をとっていたら、たぶん奇妙なものに反応しているのだ。それはたぶん自分である。(パーソンの特異性原則)
「『社会調査』のウソ」
谷岡一郎
文藝春秋 文春新書(2000)
評価:★★★★☆
誤った、不正確な調査結果を垂れ流すマスコミや政府機関。恣意的な結果の誘導すらある。私はこの本を読んで統計的な調査結果に関する見方が劇的に変わった。面白い実例に満ちている情報リテラシー必読本。
「苦情という名の贈り物」
J.Barlow/C.Moller
生産性出版(1999)
評価:★★★☆
「顧客からの声をビジネスチャンスに変える」との副題がついている。日頃、ソフトウエアメーカー、ハードウエアメーカーの無愛想なサポートに腹を立てている人も多いかと思うが、この本は顧客の苦情をうまく処理することで、顧客をつなぎとめると共に、サービスを向上させる方法を有名企業の実例や著者の経験から展開する。翻訳は劣悪である。主旨のみ読み取って欲しい。
「大事故の予兆をさぐる」
宮城雅子
講談社ブルーバックス(1998)
評価:★★★★
航空事故の調査研究の成果である。事故(アクシデント)に対して、事故に至らず、回避された前事故をインシデントというが、著者は、事故の予防には、このインシデントの分析が必要であると説く。実際にインシデント情報を分析した例も豊富で、すばらしい研究である。また読んでいて非常におもしろい。
「思考と行動における言語」
S.I.ハヤカワ
岩波書店(1985)
評価:★★★★
ソフトウエア開発者において、自国の言語を習得する重要性は、ダイクストラに指摘されるまでもなく、明らかである。しかし、これはソフトウエア開発に特有なことではなく、全ての業種、もっと広く、政治、社会に共通する。
本書を紹介しようと思ったきっかけは、確か1年ほど前の「日経コンピュータ」の書評である。とはいっても新刊ではなく40年以上も読み継がれている名著で、言語とコミュニケーションに関する研究で、豊富な例を交えたわかりやすい説明であり、実用的な価値も大きい。思考、話し合い、議論、説得において言語の果たす役割、陥りやすい誤りを指摘している。
これがソフトウエア開発にどう関係するかというと、人間同士のコミュニケーションを、偏見を排除して建設的に行う方法を示しているからだ。大規模なプロジェクトになるほど、個人の時間でコミュニケーションに費やす時間が増える。この時、例えば議論の中で「よい」「悪い」の2値論に陥らずに、建設的なアウトプットを出すにはどうすればよいか、抽象レベルの混同による混乱を避けるには何に注意すればよいか、といった事などである。ワインバーグのアプローチに通じるところがあると言える。もっとも著者の意向はもっと大きな、社会の問題、国家間の問題、さらに文明の問題を例に取っている。 |